朝の光が差す山の稜線。新緑と岩。
REPORT — VOL.18 / 2026 初夏

稜線をつなぎ直す

麻市側、馬見山の登山口に集合したのは午前七時。前週の長雨で崩れた路肩と、冬を越して倒れたままの杉の処理が今日の仕事だ。会員九名、それぞれが鋸とロープ、剪定鋏を背負って歩き出した。山に登るためではなく、誰かが安全に登れるように。

登山道で作業する人の後ろ姿。新緑の森。
馬見山八合目の土留め作業。丸太を横に渡し、杭で止める。 — 標高 800m

嘉穂アルプスと呼ばれる古処山・屏山・馬見山の三山は、嘉麻市と朝倉市の境を東西に走る一本の稜線で結ばれている。眺めはよく、四季それぞれに表情を変える低山だが、整備の手が入らなければ登山道はあっという間に藪へ還る。当会が嘉麻市側の維持を引き受けて、もう十八年になる。

この日の主な作業は三つ。倒木の伐採と撤去、雨で抉れた登山道の土留め、そして夏に向けた下草刈りである。馬見山八合目の急登では、流れた土を堰き止めるために丸太を横に渡し、杭で固定していく。地味で、汗だくで、写真に映えない仕事だ。

屏山との鞍部まで来ると、若手が真新しい道標を立てた。古いものは根元から朽ちて、いつ倒れてもおかしくなかった。方角と山名、そして次の分岐までの所要時間。それだけのことが、ガスに巻かれた登山者の生死を分けることがある。

正午、古処山のツゲ林の手前で握り飯を広げた。特別天然記念物のこの原始林は、踏み荒らしを防ぐロープ柵の点検も我々の仕事だ。誰かが「登山道は、放っておけば消える道だ」と言った。歩く人がいて、直す人がいて、初めて道は道であり続ける。下山のころには、稜線はまた一本、確かにつながっていた。